2021年12月11日ー19日
at 鹿児島歴 史・美術センター黎明館
ハベルハベラ
奄美大島から台湾まで、弓状に連なる一帯の島々を指す「琉球弧」という言葉がある。
琉球弧に位置する奄美大島と沖縄本島、それぞれの地で植物染色を軸に作品 制作を行うアーティスト、
橘田優子と金井志人によるユニット”kittanai”。
kittanai 名義では二作目となる展示作品「ハベルハベラ」は、琉球弧の島々をつ なぐ移動 手段としての「舟」と、
風に乗って海を渡る蝶をモチーフに制作された。
作品タイトルとなっている「ハベルハベラ」は、奄美と沖縄それぞれの地で「蝶」 を意味 する言葉を繋げたものとなっている。 現代のように交通網や伝達手段が発展していなかった時代、言葉や文化は口から口へ、海を渡る人々によって運ばれ、伝えられるものだった。かつて交易や漁に 出た 旅人たちは他島の歌を土産に帰ってきたという。
それは現代のような瞬間的 イメー ジの共有ではなく、身体を器として運ばれる記憶であり、時間そのものであったのではないだろうかと想像する。そうして運ばれた記憶はやがて持ち帰ら れたそれぞ れの土地の時間と重なり、独自に発展しさまざまな形で保存されるこ とになる。文 明の発展によって瞬間的イメージの共有や記録が可能になった今 日、物理的な距離 や時間を飛び越えて、文化はめまぐるしく流動している。しかし 一方で、かつて舟 で運ばれ、伝えられ、受け継がれていた歌や踊りや祭祀はひと つまたひとつと、こ の世界から姿を消しているのだ。
「ハベルハベラ」という作品は、分断された時間を接続する試みであり、同時に未来という時間を想う予祝でもある。
連綿と重なる時間の多層の内に生きる私たち の 微かな羽ばたきが、やがて心地よい風となってまだ見ぬ世界で吹くことを願って。
KITTANAI
日本の南に広がる琉球弧に位置する奄美と沖縄。今もなお太古の自然と文化が脈 打つ二つの島で天然染色を行う。Yukihito Kanai と kitta が色で対話することを試みようと 2021 年に結成したユニット。言葉を越えて自然に宿る美を表現している。
kittanai Official Instagram @kiattanai.dye
Photo by Yayoi Arimoto
2021
Space Design / Installation